お店の話 第7話

お店の話 第7話

店主「思い返してみると、当時63歳でした。若かったですね。」
拓「普通に考えると、63歳は定年の年齢ですよね。退職金をもらって、年金で年寄りらしく暮らす方が多いと思っていますが、、、。私の父もその一人です。今の私には定年のことなど全く思いにもよりませんけど。」

店主「私みたいなことを、熟年起業というのでしょうか。本屋さんにもそんなタイトルの本が目につきますよ。団塊の世代がこれからどっと世に出てきますからね。」

拓「順風満帆のように聞こえますが、ご苦労されたこともあったのではないですか?」

店主「正直言うと、苦労の連続といったほうが当たっていますね。まず、オーストラリアのワイナリーにワインの注文をしたのですが、注文量が非常に少ないので、いつまでたっても到着しないで、ネットやら電話で注文が入っても在庫が間に合わないという困ったことになっていました。反省点としては、ワインの本数として600本前後の本数だと、船のコンテナは、混載扱いとなってしまい、コンテナが埋まるまで待たなくてはいけない。そのために、いつ出港するのか見当がつかない。」

拓「初めて輸入されても、どのワインが売れるか売れないか判断するのも大変なことですよね。」

店主「この仕事はやってみてだんだん分かってきたのですが、在庫を長く持っていることが経営上一番よくないということで、売れるワインを多くして売れないワインを少なくする判断が大事なことなんですね。始めた頃はそれが全く分からない状態でした。国内の大規模の輸入業者は経験上マーケット分析ができているでしょうからね。それと、航路の問題が浮上したのです。通常オーストラリアから横浜港まで直行で20日間ほどですが、シンガポールとか韓国を経由して、積み替えをすると何日かかるか分からないので、原則、直行便とするようにしました。というのも、シンガポールで積み替えするとなると赤道直下の港で直に置かれてしまい、高温のためにせっかくの品質が損なわれてしまうことになる、これは怖いですね。」

拓「お聞きしないと分からない問題があるのですね。横浜港に着いたらそのあとはどうなるのですか?」

店主「ワインが港に到着すると、まずは税関を通過する手続きがあり、関税や消費税、酒税などを支払い、検疫所で食品検査を受けてからようやく手元に来るわけです。これを横浜港にある倉庫会社に、17℃、70%の定温定湿の条件でワインに最適な保管をしてもらいます。自宅では不可能なのでやむをえません。」

拓「ワインの保管は詳しく知りませんが、何となく地下室がいいとか友人が言っていたことを思い出しました。」

店主「そうですね。地下室はまず光が来ないし、温度が安定してある程度の湿度があるので良いと思いますよ。ただ、冷蔵庫は乾燥するので長期保存は向いていないけど、今晩飲むために冷やすというのはありですよ。」

拓「ワインを飲むための温度というのはあるのですか? 日本酒だと熱燗とか、冷でとか、常温とか、うるさい人はそれなりに注文しているのを聞きますけど。」

店主「ワインを飲むときの温度は、そのワインの持ち味を十分に引き出すためにはとても大切なことで、知っておいたほうがより楽しめるでしょうね。
例えば、シャンパンとかスパークリングの泡ものや、白ワインの甘口は、4〜7℃。白の重口や赤の軽口だと、11〜14℃。 赤の重口は、17〜18℃が最適と言われていますが、季節や気温、そして合わせる料理なども柔軟に考えてみると良いのではないかと思います。」

拓「うわー、ワインと温度の関係について、ずいぶん参考になりました。ありがとうございました。今日はこの辺で失礼します。」
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