お店の話  第4話

お店の話 第4話

  


店主「おはよう。拓君、と呼んでもいいかな? 今日はこれから、ブドウを収穫する畑にまつわるお話をしましょうか。


日本の田植えとか刈り取りと同じように収穫の時期は地域全体が一斉に始まるので、人口の少ないこの国では、まずは人材の確保が最重要。10年前は1時間当たり9豪ドルだったのが今は16豪ドル1日128豪ドル(約9,000円)とかで、小規模生産者は悲鳴を上げている状況だけどやらないと始まらない。


ブドウのピッキング作業は、朝8時から開始、10時にティータイム、10:30分から再開、13時からランチ、13:30分から再開、16時終了。作業日によっては、高温で乾燥、強風という厳しい時もあり、ピクニック気分とは言えません。



ずいぶん前の話だけど、自分の腕に毛虫がいるのを驚いて、はさみを飛ばしたことがあった。そのはさみを拾ってみたら、間にあるはずのバネがないので、馬鹿になって切れない。
バネを探していたら、皆から「何休んでいるんだ!」とはストレートに言われずに、「大金でも落としたのかい?」という冗談を言いながら大声で笑われたことがあったな。



風の強い日は、葉っぱが揺れるので、隠れているブドウの房を見つけるのが簡単じゃなくて、疲れているせいもあって、いい加減にパチッと入れたら自分の指を切ってしまった。これがかなり痛くて大声を出したら、皆が大声で笑ってくれて、「大丈夫だよ。1回やったらもう二度とやらないからね。」と。それほど痛いから今後は注意をするからだって言われたよ。
つまり、皆その経験者だって。確かに毎年行っているけど、その後はやらないね。



たっぷりと働いた後はお決まり、近くの居酒屋に行って冷たいビールで乾杯。


ここで、近所の人たちが、「今日のボーメはどうだった? うちのは、13.7だったよ。かなりいいね。」なんて会話していて、それぞれボーメがいくつだったか情報交換している。
ボーメはどういう意味? と聞いたら、ボーメと言うのは、ブドウの糖度をフランス語で言っている潜在アルコール度数のことなんだって。この糖度が酵母菌で発酵することによって、ほぼ同数のアルコール度に転化するからとても重要な数字だと教えてもらった。



拓「わあー。お話聞いているとなんだか自分も行ってみたくなちゃった。」


店主「拓君もそうか。私の友人もぜひ行きたいと言われて、今まで10人も現地に連れて行ってあげたよ。ありきたりの海外旅行と違うから、みんな大喜びだったみたい。」


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